2009年9月から一年間
ドイツ、ミュンヘンにてオペアを経験





柚田 菜保子さん(大学を休学して参加) 大分出身

私は、2009年9月から一年間ドイツのミュンヘンでオペアとして働いてきました。私にとってこの一年間は本当にあっという間で、日本では決して味わえない素晴らしい体験ができ、とても充実した一年となりました。

私がオペアとしてドイツへ行くことを決意したのは、出発の4カ月前、5月の初めでした。 当時私は大学でドイツ語を専攻していたため、何らかの形で、ドイツへ行くことは考えていました。 そんな中偶然見つけたのが、オペアという制度でした。費用もかからないし、ファミリーのもとで文化も体験できるし、語学の勉強もできるし…。私はこれだ!と思い、次の日には両親に相談しました。もちろん大反対されたのですが、私は反対されると逆に燃えてしまうタイプなので、なんとか説得を試みながら、同時にもう準備を始めていました。

私は大学の関係で、8月か9月には出発しなければならなかったので、ファミリー探しに時間をかけることはできませんでした。 条件は重要だとはわかっていたのですが、その時は受け入れ先が決まり、ドイツに一年いることができるだけでいい!と思っていたので、あまり条件は気にしませんでした。 最終的に二組のファミリーから申し出があったのですが、過去に二人のオペアさんたちが最後までやりぬいたことを決め手に、今のファミリ―に決定しました。 ファミリー決めも一カ月半ほどで済ませて、残りは語学の勉強や、保育園でのボランティア、ドイツ渡航の手続きなどに時間を充てました。

そんな調子でバタバタと準備をして、9月の頭にはドイツのミュンヘンに着いていました。

ファミリー決めにもう少し慎重になるべきだったと反省していた私ですが、家族は空港で私を温かく迎え入れてくれ、そのような心配もなくなりました。その時はこれからのドイツ生活への不安よりも、わくわくした気持ちの方が勝っていました。

実際に一年間を思い返してみると、つらいことや苦労したことよりも、楽しかった思い出の方が多かったのですが、さすがに最初の三カ月ほどは、本当に一年間やっていけるのかと不安に思う毎日でした。

まず問題となったのが言語です。
大学でドイツ語を学んでいたとはいえ、話したり聞いたりすることがまだできませんでした。

ネイティブのドイツ語は想像以上に聞き取りにくく、家族に頼まれたことも理解できずに何度も聞き直したり、間違ってやってしまったり、子供に注意をしたくても何を言っていいのか分からず、話しかけてくれたことに対しても受け答え出来ませんでした。きっとファミリ―も、私がこれほどドイツ語を出来ないなんて思っていなかっただろうなと思うと、とても申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

そして一番私を落ち込ませたのは、子供がなかなかなついてくれなかったことです。

上の男の子は、私と二人で過ごす時間が多かったため、私とすぐに打ち解けることができたのですが、下の女の子は一緒に過ごす時間が短かったためと、前のオペアさんにとてもなついていたため、私になかなか心を開いてくれませんでした。私を見ると泣きだす、嫌がる、そしておむつも替えさせてくれず、着替えの時も逃げられてしまいました。そのような状態が二カ月ほど続き、精神的にとてもつらくなった私は、ファミリーのパパとママに相談しました。仕事も満足にできない私は、本当にこのファミリーの役に立っているのかが知りたかったのです。
するとパパとママは、「心配ないよ。まだ菜保子が来て、たったの数か月だよ。 子供が慣れるのに時間がかかるのは当たり前。菜保子は子供たちとよく遊んでくれるし、私たちはそういう所がとても気に入っているんだよ。きっと下の子ともすぐに打ち解けられるよ。」と言ってくれました。

その言葉を聞いて今まで抱えていた不安は無くなったし、両親も下の子と過ごす時間を増やしてくれました。そのおかげで3か月たったころから、下の子も私に心を開いてくれるようになりました。私が出掛けるときにはいってらっしゃいのキスをしてくれたり、二人で私を取り合ったり、抱きついてきたりと、オペアをやり始めたころからは想像できないほどなついてくれるようになりました。

言語面も、語学学校に通い始め学校の友達と話すようになってから、話すことに自信がつき始めました。

その後もドイツ人の友達を作るように努力し、子供たちにも質問するようにしたり、話しかけたりすることで、日常生活では問題ないくらいのドイツ語もしゃべる事ができるようになりました。

半年も経つと、毎日が本当に楽しくてしょうがなくなりました。日本に帰る日が近づくに従って、ドイツにもっと残りたい!もっと色んな経験がしたい!という気持ちがますます強くなっていきました。 自分でもこんなにもドイツを好きになったことに驚いています。

オペアとして一年間やってきて、つらいことは数え切れないほどありました。
でも私にとってそれ以上に、仕事での達成感、人の役に立つ充実感、自分が日々成長している実感の方が上回っていました。 きっともっとこの上があるはずだから、このままでは満足したくないと思い、結局もう一年ドイツに残ることに決めました。

この決断がいい方向に向かうのかは分かりません。
でも、オペアとして経験したことはきっとこれからの私の助けになると信じています。
このことを心の支えにしてあともう一年、また一歩成長した自分を想像しながら、ドイツでがんばっていきたいと思います。






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